忘れえぬ夏(1)

 熱い日差しが照りつける日が続く、2015年の夏。一ヶ月近く続いたジメジメした嫌な梅雨がやっと終わったと思ったのもつかの間のこと。梅雨明け宣言が発表されたその日の午後から気温は急上昇。30度、いやいや35度をを超える猛暑が続いている。
 そんな猛暑が続いている東京のテレビでは、もっぱら熱中症予防を呼びかける内容の放送とともに、あと5年先に控えている東京オリンピックの新国立競技場問題が激しく協議されていた。集団自衛権の行使も含め、共通することはどちらも”熱い”ということ。この日本独特のジメジメした居心地の悪い陽気を一層熱くさせているのは、何を隠そう久しぶりの長期政権で日本の未来の舵取りを任せられた安倍政権だということを、国民の誰もが気づき始めたころだった。
 今年の夏のように、35度を超えるような猛暑が続いた日が今まであったのだろうか?と、ついつい疑いたくもなるが、こんな照りつく太陽と、アスファルトの上に幻想的に広がる蜃気楼を見る度に思い出すのは、45年前の生まれ故郷加津佐町での熱い夏だった。45年前の加津佐町の夏も、未だに忘れられない記憶の奥に残る熱い夏がそこには間違いなくあった・・・。

 「敬三くん見つけた!」。「早かねー、もう見つかったと。目ば半分開けとったっじゃなかと?」。無邪気にかくれんぼをする子供達。色黒に日焼けした細い体の上には、真新しい鉄腕アトムのTシャツに、何箇所も敗れたり解れたりしている半ズボン。髪の毛は、前髪をまっすぐに揃えたオカッパ頭。男の子と女の子の違いは髪型ぐらいで、後ろ髪を刈り上げているのか、そのまま伸ばしているかぐらいの違いぐらいで、身につけているものはそんなに違いはなかった・・・。
 

つづく

とある人物のとある小説

テーマはいろいろ。未発表の小説をここで書き続けていきます! 興味のある方はご覧下さい! また、作家志望の方で、作品を掲載して欲しいという方もいらっしゃれば、ご相談の上掲載させていただきたいと思っています。

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