ナゾの男は、アイドルの元ダンナ! (1)

Phone5の呼び出し音が鳴ったのは、夕方の5時を過ぎたあたり。レコード会社時代から付き合いのある、スタイリストの佐藤シュガーちゃんからの電話だった。
「ご無沙汰しています。元気ですか?」と、昔と変わらない明るい声が、機種交換して半年が過ぎようとしていたシルバーボディーのiPhone5から響いてくる。
電話の主である、シュガーちゃんは、もう50を過ぎたであろうバツイチで、そろそろ高校生になる女の子がいるシングルマザー。智がレコード会社で宣伝部に所属していた時代に、「なごり雪」の大ヒットで一世を風靡したイルカさんのスタイリストを務めていた、お酒好きの童顔な巨乳女子だ。
「久しぶりだねー、元気だよ。どうしたの?」と返す。
「今、お話ししても大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
「私のママ友のお兄さんが、イベント会社を立ち上げようとしているそうで、そこに芸能関係の詳しい人に参加して欲しいようで、誰かいい人紹介してくれませんか? というので、加藤さんがいいかななと思って・・・、来週のどこかで時間を作って欲しいんですが? いかがですか?」
「そう。そんな大役ボクで大丈夫なのかなー? その人はどんな人なの?」
「それがびっくりなんですが、元・杏里の旦那で、山本寛斎の甥の方なんです」
 「杏里って、あの杏里?」
「そう、あの杏里です」
「山本寛斎って、あの山本寛斎?」
「そう、あの山本寛斎さんです」
「杏里の元旦那で、山本寛斎の甥とは、それだけでも凄い経歴だね」。数年前までキー局の情報番組で芸能デスクを務めていた智は、杏里の元旦那という人物に、すでにその人物に興味を持ち始めていた・・・。
少しの沈黙の後に、「大丈夫だよ。日にちと時間を決めてよ!」
「ありがとうございます。日程を確認して連絡しますね」
「ハーイ、ヨロシク!」
「キャッツアイ」や「オリビアを聴きながら」の大ヒット曲を持つ、あの杏里の旦那で、山本寛斎の甥・・・。電話を切った後に、yahooで検索してみる。
「杏里 元旦那」で検索しようと思って、「杏里」と打ち込むと「杏里 元夫」と出てきた。それでそのまま検索してみると・・・。
”岸田健”という名前が出てくる。ん、なになに、ジャニーズの元アイドル・豊川誕と関わっていた様子が分かる。豊川誕とは、ボクらの世代のアイドルで、寂しげな表情で、アイドルの中でもちょっと異色な感じで売り出した男性アイドルだ。
巧みな話術で、豊川誕からお金をだまし取っていたのか・・・。智は、ちょっと不安を抱きながらも、まー半分騙されたつもりで会ってみるか、とすでに決めていた。



つづく

とある人物のとある小説

テーマはいろいろ。未発表の小説をここで書き続けていきます! 興味のある方はご覧下さい! また、作家志望の方で、作品を掲載して欲しいという方もいらっしゃれば、ご相談の上掲載させていただきたいと思っています。

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